コロナ禍で「3蜜」を避ける事を強いられているなか、「産後うつ」の症状に悩む女性が増えていることをご存知でしょうか。専門家からもその深刻さが問題視されています。
孤立する母親
「感染するのが気になって外出できない、育児の相談もできない。何に対しても不安で突然涙がこぼれてきます、本当に理由がわからない涙なんです。なんで私、泣いてるんだろうって…..」
東京都内で緊急事態宣言のさなかのことし5月に長女を出産した30代の女性がそう打ち明けています。
想像とかけ離れていた現実
コロナ禍での出産は、当初、予定していたものと全く違っていたと言います。
外出自粛が続き、自治体による妊婦向けの学級は中止となり、赤ちゃんの世話や産後の体のケアなどについて知りたかった情報を十分に得られないまま出産の日を迎えます。
当日は、感染対策のため、予定していた夫の立ち会いもできなくなりました。マスクを着用しての1人での出産でした。
その後も入院中は夫や家族との面会が許されず、出産の喜びを分かち合うことはできなかったといいます。
女性は自宅に戻ってからも、感染が気になり外出することもままならず、誰ともかかわらずに1人で子育てに追われています。
集団での健診や子育て支援の集まりも中止や延期に。「ママ友」は1人もいません。気持ちが落ち込むようになり、涙が流れるようになりました。
最近では、週に何度も急な腹痛に襲われるようになり、トイレから出られず、泣いている子どもをあやすことすらできません。
自分を責めてしまう
女性は「コロナの中でもみんな頑張っているのに…。こんなふうになっているのは私だけなんでしょうか」と、母親としてだめだと自分自身を責めてしまうのです。
専門家はこう話す
国立成育医療研究センター 立花良之医師は、
「心の問題は自分で気付かないことが多く、特に頑張っている時は、『弱音なんて吐けない』『赤ちゃんのために頑張らなくては』と思い、多少体調が悪くても気持ちを押し殺したり否定したりすることがあり得ます。放っておくと、疲れがたまって限界を迎えることがあるのでできるだけ早く、周りの人が気付いて、支援につなげる必要があります」と分析しています。
また、ある調査では、「産後うつ」の可能性があるとされた母親のうちおよそ3分の2が、自分自身がうつ状態にあると認識できていないこともわかりました。
最後の砦は旦那さんの理解と協力
NPO法人の塚越学さんは、
「出産も大変ですが、本当の戦いは産後です。赤ちゃんって、穏やかな笑みを浮かべたかわいい様子を想像すると思いますが、実際は違う。本当によく泣く。女性は、24時間態勢の育児が続き、クタクタな中、ホルモンの影響もあって育児に非協力的な夫は敵と見なしてしまう。育児のスタートラインは一緒に切ることが大切です」と話します。
コロナ禍では、父親の育児参加が母親の孤立を防ぐ「最後の砦」になると呼びかけました。
どうしたら救えるのか
「産後うつ」は、どんなに精神力が強い人でもどんなに健康な人でもなる可能性があります。自分から誰かに相談したりSOSを出したりすることができないケースも珍しくありません。
もしみなさんの近くに心配な状態の人がいるなら、相談機関や医療機関につなぐことも検討してください。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で、子育ての環境は大きく変わっています。本来頼りたい母親とはコロナの感染が怖くて、助けを求めることができず、慣れない育児をたった一人で向き合わなくてはいけないという現実。
せめて、そばにいる誰かに子どもの成長をそばで見守って一緒に喜んでもらうことが大切です。
「頑張ってるね。大丈夫?」とひとこと声をかけてあげられる環境が必要です。
これまで出産し、退院すれば終わりだった病産院が、その後もフォローを続けていく動きが出始めているようです。
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