「好きだ」という
強い気持ちが、
夢を叶えるための
大きな力になる。

元新体操日本代表
ドクターエア・
スペシャルアドバイザー

畠山 愛理

Airi Hatakeyama

小学1年生で新体操を始め中学3年生で新体操日本代表・フェアリージャパン入りを果たした畠山愛理さん。17歳で挑んだロンドン五輪で団体7位、次のリオデジャネイロ大会でも8位入賞に貢献しますが、その競技人生は怪我との闘いでもありました。

引退後はスポーツキャスターやモデルなど多方面で活躍する畠山さんに、新体操を続けることを諦めなければならないほどのピンチをどうして乗り越えられたのか、何が自分を突き動かしたのかを聞きました。

もっとたくさんの人に演技を見てもらいたい!

小学2年生から6年生まで出場していた小学生だけの全日本大会の予選は各選手同時に演技をするのですが、決勝に進むとその大きな体育館で1人で演技ができたんです。

私は上位の結果を残したいというよりも「たくさんの人に自分の演技を見てもらいたい」と思うタイプだったので、小学6年生の時にやっと決勝に進んで入賞できた時に「次はもっとたくさんの人に見てもらいたい」と純粋に思い、「オリンピックに出たら世界中の人に見てもらえる!」と、その時に大きな夢ができました。

もっとたくさんの人に演技を見てもらいたい!

オリンピックという夢に近づく最後のチャンス

中学に入ってからもクラブチームで練習を続けて、3年生の時にロンドンオリンピックのフェアリージャパンのオーディションを受けて合格しました。決まった時はすごく嬉しくて、初めて“JAPAN”と書いてあるジャージに袖を通した時のことは今でも強く心に残っています。

また、身体が成長するにつれて不調や怪我との闘いもありました。中学1年生の時は極度の貧血に悩まされ、病院に行ったら「車椅子に乗ってください」と言われるほどで、中学2年生の時には今も悩まされる腰の分離症とすべり症を起こしてしまいました。小学生までは「好き」という気持ちだけでどんどん上達したのに、この頃はそうはいかず、一度は「新体操が嫌い」だと思うまでになりました。

新体操をやめて別の道に行くか、この先も続けるかを決めるという覚悟を決めたうえで受けたのがロンドンオリンピックに向けたオーディションでした。私にとっては、「夢に近づける最後のチャンス」だったんです。

新体操への本当の気持ちに気付いた

オーディションの前は、新体操への気持ちが離れていると思っていましたが、覚悟を決めて演技をすると、知らずしらずのうちに積極的に審判をしっかり見て、「私はこれだけ気持ちが強いんです!」と訴えながら演技しました。結果的にその気持ちや伸びしろを買っていただき合格できたんだと思います。

その後の練習は心を決めた通り「絶対にオリンピックの舞台に立つまで何が何でも頑張ろう!」「やっぱり新体操が好きだな」という気持ちで臨めるようになりました。

新体操への本当の気持ちに気付いた

感情を伝えることの大切さを学んだロシア合宿

フェアリージャパンの一員になった3日後にロシア合宿へ出発しました。そこで私は、技の正確さや同時性だけではなく「見ている人に感情を伝える」ということが大切だと身を持って学び、本場の地で自分は間違っていなかった、と自信を深められたんです。

そして、それまではあまりコンディショニングの知識もありませんでしたが、練習前の身体の準備や練習後のクールダウンがいかに大事なのかも知りました。身体の準備をしっかりすると、明らかに柔軟性が違うんです。

当時はテニスボールやゴルフボールを使って筋肉をほぐしていましたが、それこそ3DコンディショニングボールやストレッチロールSがあれば、もっと効果的にできていたと思います。選手の時に使いたかったですね。

感情を伝えることの大切さを学んだロシア合宿

もう一度オリンピックに出たい!という思いが強まる

ロンドンオリンピックでは団体総合7位という好成績を残せました。大舞台で演技できたことはすごく嬉しかったですし、達成感もありました。でも、強く感じたのは、「一瞬だった」ということ。

新体操団体の演技時間は2分半です。小学6年生から夢見ていて、1日8時間の練習を続けてきたのに、オリンピックの舞台はほんの一瞬でした。すると「もう一度オリンピックに出たい!」とすぐに次のオリンピックへのモチベーションが高まったんです。

すごく厳しい日々がまたやってくるのはわかっていたけど、「夢を叶えたい」、そして「新体操が好きだ」という気持ちがますます強くなりました。

引退後、次のステージへの挑戦が始まる

リオデジャネイロオリンピックでは団体総合8位という結果でした。その後引退を決意しましたが、怪我を抱え痛みで自分らしさが表現できなくなるのなら、「新体操が好きな状態で、自分が輝いている状態で競技をやめたい」という思いからでした。

引退してから特に思うのは、子供の頃によくここまで「好きだ」と思える競技に出会えたなということです。それだけですごく幸せなことだったんだと今になって強く感じます。

今は、新体操と同じくらいにしっかりと向き合って、全力で取り組めることを見つけたいと思っています。それは私の新しい課題であって、これからの大きな目標です。純粋な心を忘れないでいれば、きっと大好きなものに出会えると信じています。

引退後、次のステージへの挑戦が始まる

遠いところを見るより、今できることを

もし壁を感じて乗り越えたいと思ったときは、そんなに硬く考えすぎなくていいんじゃないかなって思います。

夢も同じで、私もオリンピックという大きな夢をもっていましたが、それだけを追い続けるとすごく遠く感じてしまうけど、その為に何をすべきか今必要なことを考えればそんなに難しく感じなくなります。遠いところを見るより、今必要なことを考えて続けることがきっと大切なんだと思います。

畠山愛理畠山愛理はたけやま・あいり

畠山愛理はたけやま・あいり

小学1年生から新体操を始める。中学3年生で新体操日本代表・フェアリージャパンのオーディションに合格し、新体操日本ナショナル選抜団体チーム入りを果たす。2012年には17歳でロンドンオリンピックに団体で出場し7位入賞に貢献。日本女子体育大学に進学し、2015年の世界新体操選手権で、団体種目別リボンで日本にとって40年ぶりとなる銅メダルを獲得。2016年のリオデジャネイロオリンピックにも団体で出場して8位入賞。同大会終了後に現役引退を発表。引退後は新体操の指導、講演、メディア出演など多方面で活躍。